フリー雀荘にはどんな強い人たちがいるんでしょうか。そこで雀荘歴二十年のメロン少佐が、実際に雀荘で出会った強い人たちをお伝えします。強者の特徴が見えてきます。
高田馬場の雀荘
私は十八、九の頃、ある雀荘に入り浸っていました。
それは高田馬場にある小汚い雑居ビルの2階。
入り口も階段も暗く、3階より上は何が入っているかもわからず、怪しいビルでした。
しかしその雀荘の重たく、見た目ボロボロのドアを開けると、いつも活気がありました。
全自動卓が牌をかき回す音、「ポン」「リーチ」「ロン」といった声、卓から卓へと動き回る店員、そして卓を真剣に見つめる四人の視線。
ミルクティー君
その店では、私がドアを開けると、「ミルクティー君、いらっしゃーい」と元気な声で店員さんが声を掛けてきます。
私は当時、店員さんからミルクティー君と呼ばれていました。
というのは私がミルクティーばっかり頼むからです。
Aさんの洞察力
いつものように高田馬場の雀荘に行ったある日、卓について私はビビりました。
なんとこの店で一番強いAさんがその卓にいたのです。
典型的な遊び人風
Aさんはまだ若く、二十代前半です。
色白で長髪、へらへらと笑う典型的な遊び人風でした。
しゃべったことはあったのですが、一緒に打ったことはありませんでした。
何度か後ろ見させてもらったことがあったのですが、とにかくツモります。
そしてオリる時にはきっちりオリます。
点棒ケースに点棒を入れているイメージしかありませんでした。
私は蛇ににらまれた蛙のような気持ちでした。
私は恐怖心からやみくもにかたっぱしからリーチをしました。
リーチをして楽になりたかったのです。
「これだろ?」
何回目かの私のリーチの時、流局すると、私が手牌を倒す前にAさんが自分の牌からぱたっと3ピンと6ピンを倒し、「これだろ?」と私に言います。
それでした。
そう、Aさんが倒した36ピン待ちだったのです。
私は声が出ませんでした。
かかかかかっと、Aさんは高笑いしていました。
結局、やみくもにかけたリーチ棒の出費で私は僅差のラス。
Aさんは余裕の2着。
私は力の差を感じ、みじめな気持ちでした。
理屈
その日、Aさんも打ち終わって、待ち席の長いすに座っています。
悔しかった私は近寄っていって、なぜ36ピンとわかったんですかと聞きました。
すると
「お前、牌を左からきちんと順番に並べてるだろ。どこから何が出てきたか見てればわかるんだよ」
との答え。
その場にひまそうな店長さんもいて、実際に牌を並べながら理屈を教えてもらいました。
ソウズ、マンズ、ピンズ、字牌をそれぞれひとかたまりにして、順番も1、2、3ときちんと理牌していると、どこに何があるかがわかるというのです。
例えば一番端から5万が出てきたら、5万より上は持ってないなとわかるように。
Aさんは、手牌のどこから何が出てきて、ツモった牌をどこに入れたかまで全部見て、私の待ちを看破していたのです。
そこまで見るのかと私は驚きました。
技巧派の打ち手
その後、手牌読みを見よう見まねでやってはみましたが、私にはできませんでした。
Aさんのあのぱたっと倒した36ピンの光景が、今でも忘れられません。
多井隆晴プロは手牌読みに長けています。
Aさんは、この多井隆晴に似た技巧派の打ち手でした。
剛腕と評判の高いBさん
この店にはもう一人強いと言われる人がいました。
剛腕と評判の高いBさんです。
ただ私は話したこともなく、麻雀を後ろ見させてもらったこともありませんでした。
というのは誰とでも気軽にしゃべるAさんとは違い、寡黙でこわもてでしたので、どうも近寄りがたいという感じがありました。
四暗刻テンパイ
そんなある日、卓割れして立ち上がると、後ろの席でBさんが打っています。
その手牌を見るともなしに見ると、ツモリ四暗刻をテンパっています。
リーチはかけていません。
すると対面からリーチが入ります。
それでもBさんは何もなかったかのようにノータイムで全ツしていきます。
日頃からBさんは打牌速度がめちゃくちゃ速かったのですが、この時はいつもにまして速いように感じました。
絶対ツモるんだという意志が、その動作に感じられます。
どよめき
この結末を私は見届けたかったのですが、後ろ見を長く続けていると高い手が入っているのではないかと他家に気づかれる場合があり、マナー違反の行為です。
実際高い手が入っていることもあり、私はその場を離れ、待合席のいすに座りました。
しばらくするとBさんの卓でどよめきが起こっています。
一人の茶髪の店員がすたすたとその卓へ行くと、「Bさんが四暗刻です」と店内に聞こえるように言います。
他の店員が「おめでとうございます」と声を掛けます。
私はいすに座りながら、やっぱりなと思いました。
「考えちゃだめ」
その後、一度お話しできる機会があり、「どうしたら勝てるんですか」と率直に聞いたところ、「考えちゃだめ」とこの一言だけ。
その時はその真意がわからなかったのですが、あとで自分なりにこう解釈しました。
感性で打てと。
いろいろ理屈をこね回すのではなく、自分がこれまで経験して、体にしみ込んだ感性を信じて打てと。
それがあの言葉になったのだと思います。
ノータイムで力強く全ツしていく姿には、そういう何かにとりつかれたような気迫がこもっていました。
感覚派
近藤誠一さんというプロがいますが、あの方も感性で打つタイプです。
Bさんは近藤誠一さんと同じ感性の打ち手でした。
またですが私もこの感性の麻雀をマネしてみました。
さんざんでした。
私にはセンスがないのかもしれません。
感性の打ち手に近づける本
感覚派の強い人になりたい方には、近藤誠一さんの麻雀本「麻雀 理論と直感力の使い方」がおすすめです。
この本は、感性の打ち手に近づける本です。
脳内科医の加藤俊徳さんとの対談もあり、医学的な見地からのアドバイスもあります。
私も買って読みましたが、感覚的な麻雀を打つための具体的なアドバイスもあり、とても参考になりました。
気になる方はチェックしてみてください。
麻雀 理論と直感力の使い方 (近代麻雀戦術シリーズ) [ 近藤 誠一 ]フリー雀荘の強い人たち 技巧派と感覚派|まとめ
- 技巧派のAさんは、私の手牌を読み、待ちを看破していました
- 感覚派のBさんは、私に「考えちゃだめ」と教えてくれました
技巧派のAさん、感覚派のBさん。
それぞれに違った強さがあります。
どちらがいいかではなく、自分に合ったスタイルが強くなる一番の方法だと教わりました。
しかし私は今だに自分のスタイルを確立できていません。
まだまだです。